ガリガリ君中毒 表紙

ガリガリ君中毒

マイ周波数装置を語る

宣言

これは、 健康の本ではない。 グルメの本でもない。 ましてや、 アイス評論でもない。 ⸻ これは、 自分を保つための装置についての記録である。 ⸻ 人にはそれぞれ、 無意識に調律している 「周波数装置」がある。 ⸻ 私にとって、 それが **ガリガリ君(ソーダ味)**だった。

デザート感覚ではない

デザート感覚ではない 誤解のないように言っておく。 ⸻ 私は、 ガリガリ君を デザートとして食べているわけではない。 ⸻ 正確には、 デザート感覚であり、 さらに言えば、 お口のリゾートとして食べている。 ⸻ 昼と夜。 食後と食後のあいだ。 ⸻ いつもの、 馴染みのセブンイレブン。 ⸻ 駐車場にクルマを停め、 エンジンを切り、 袋を開ける。 ⸻ その一連の動作まで含めて、 装置は起動する。

なぜ、ソーダ味なのか

なぜ、ソーダ味なのか 理由は、 あとから考えればいくらでも付けられる。 ⸻ だが、 最初にあったのは理屈ではない。 ⸻ 音。 ⸻ ガリッ という、 あの噛音。 ⸻ 歯に伝わる振動。 ⸻ 脳に抜ける冷気。 ⸻ 一瞬で、 余計な思考が止まる。 ⸻ これは、 味覚ではない。 ⸻ 周波数だ。

温度というスイッチ

温度というスイッチ 冷たい、 というだけでは足りない。 ⸻ 一定の温度。 ⸻ 毎回、 ほぼ同じ。 ⸻ ブレない。 ⸻ この「ブレなさ」が、 装置として重要なのだ。 ⸻ 人間は、 思っている以上に ブレている。 ⸻ だからこそ、 外部に ブレないものを置く。 ⸻ それが、 ガリガリ君だった。

音は、記憶を連れてくる

音は、記憶を連れてくる ガリッ。 ⸻ この音で、 過去が一気に戻る。 ⸻ 夏休み。 放課後。 コンビニ。 ⸻ だが、 特定の思い出ではない。 ⸻ 雑多な記憶の束だ。 ⸻ 整理されていない記憶は、 逆に安全だ。 ⸻ 感情に引っ張られない。 ⸻ ただ、 整う。

浮気の話(夏のやつ)

浮気の話(夏のやつ) ソーダ味のほかに、 本物のミカンが入ったやつがあった。 ⸻ ソーダ味に隠れて、 こそこそ食べた。 ⸻ それは、 夏の季節限定販売品だったらしく、 今はもう、 まったく見かけない。 ⸻ まるで、 ひと夏の浮気体験のようだ。 ⸻ ソーダ味には、 悪いことをした。 ⸻ だが、 背徳の味も捨てがたし。 ⸻ ただし―― 戻る場所は、 いつも決まっている。 ⸻ ソーダ味は、 何も言わない。 ⸻ だから、 装置として成立する。

期間限定は、装置になれない

期間限定は、装置になれない 期間限定は、 記憶にはなる。 ⸻ だが、 常用はできない。 ⸻ 装置には、 なれない。 ⸻ 装置とは、 いつでもそこにあるものだ。 ⸻ いなくならない。 ⸻ 期待を裏切らない。 ⸻ 裏切られないことが、 最大の安心なのだ。

周波数装置としての完成度

周波数装置としての完成度 派手さは、いらない。 ⸻ 感動も、いらない。 ⸻ ただ、 同じ効果が、同じ手順で得られる。 ⸻ それだけでいい。 ⸻ ガリガリ君は、 それを全部満たしている。 ⸻ しかも、 説明不要。 ⸻ 誰に勧める必要もない。 ⸻ 自分だけが知っていればいい。

中毒という言葉について

中毒という言葉について 中毒、と書いたが、 依存ではない。 ⸻ 逃避でもない。 ⸻ むしろ、 戻るための道具だ。 ⸻ 考えすぎたとき。 疲れすぎたとき。 喋りすぎたとき。 ⸻ 一度、 ゼロに戻す。 ⸻ そのための、 音と温度。

最後に

最後に もしあなたにも、 同じようなものがあるなら、 それは大切にしたほうがいい。 ⸻ それが アイスでも、 コーヒーでも、 音楽でも、 散歩でもいい。 ⸻ 名前を付ける必要はない。 ⸻ ただ、 装置として扱う。 ⸻ そうすると、 人生は少しだけ 扱いやすくなる。 ⸻ 私にとっては、 それが ガリガリ君だった。 ⸻ 今日も、 どこかの駐車場で、 静かに 周波数を合わせている。 ⸻ (完)